この研究でわかったこと(3行まとめ)
- 糸による隆鼻術(溶ける糸で鼻先を高くする施術)を受けた6人を、糸を鼻中隔だけに入れた3人と、鼻中隔と鼻筋の両方に入れた3人に分け、3D画像で鼻の形の変化を比べました。
- 鼻中隔だけに入れると、鼻先が上を向く方向に変わり(鼻唇角+15°)、鼻中隔と鼻筋の両方に入れると、鼻の長さの比率を保ったまま鼻先が前に出ました。
- ただし6人だけの予備研究で、腫れが引く前の測定です。「糸の入れ方で仕上がりの方向を変えられる可能性がある」ことを示した段階です。
「糸で鼻を高くすると、どんな形になるの?」「鼻先を上に向けたい/向けたくない」――糸による隆鼻術は、切らずにダウンタイムが短い施術として広まっていますが、糸の入れ方で仕上がりがどう変わるかを数字で示した研究はありませんでした。この記事では、6人を対象にした小さな予備研究を紹介します。私は共著者として関わりました。
論文の基本情報
| 論文タイトル(原題) | Pilot Study: Thread Rhinoplasty With Different Methods of Barbed Thread Implantation |
|---|---|
| 日本語訳 | 予備研究:バーブ付き糸の埋入方法の違いによる糸隆鼻術 |
| 掲載誌 | Plastic and Reconstructive Surgery – Global Open(米国形成外科学会 ASPS のオープンアクセス誌) |
| 掲載 | 2025年5月27日 オンライン公開/第13巻5号 e6807 |
| 著者 | Takahiko Tamura, Yoshiyuki Furuichi, Taichi Tamura, Takumi Fuse, Masaki Toma, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Hiroo Teranishi |
| 研究デザイン | 前向き観察研究(予備研究) |
| 対象 | 2024年2〜5月に糸隆鼻術を受けた6人(全員女性、平均26.3歳) |
| DOI | 10.1097/GOX.0000000000006807 |
なぜこの研究を行ったのか
鼻の手術は日本でも世界でも件数の多い美容手術です。とげ(バーブ)付きの溶ける糸で鼻先を支える糸隆鼻術は、ダウンタイムが短く満足度も高いとされますが、「糸をどこに入れるか」で仕上がりが変わることは経験的に知られていても、測定した研究はありませんでした。
どのように調べたのか
- 対象:6人を、糸を鼻中隔(鼻の真ん中の仕切り)だけに入れたグループ(S群・3人)と、鼻中隔と鼻筋(鼻背)の両方に入れたグループ(SD群・3人)に分けました。手術はすべて同じ医師。
- 測定:3D画像解析装置(VECTRA H2)で、手術前後の鼻の長さ、鼻翼の長さ、鼻唇角、鼻前頭角、鼻顔面角、鼻あご角を測りました。
- 統計:グループ間の比較にマン・ホイットニーのU検定。
結果

- 鼻中隔だけ(S群):鼻唇角が107°から122°へ(+15°、p=0.02)。鼻先が上を向く方向に変化しました。鼻の長さはわずかに短くなりました。
- 鼻中隔+鼻筋(SD群):鼻唇角はほぼ変わらず(−1°)、鼻の長さが4.1mmから4.4mmへ伸びました(p=0.01)。鼻先が「上を向かずに前に出た」形です。
- グループ間の差:鼻唇角の変化(+15° 対 −1°)、鼻前頭角の変化(−3° 対 +1.7°)、鼻顔面角の変化(+4° 対 +1°)に統計的な差がありました(いずれもp=0.04)。
患者さんにとっての意味
この研究が示しているのは、同じ「糸の隆鼻術」でも、糸を入れる場所によって、鼻先が「上を向く」か「前に出る」かが変わるということです。鼻先を少し上向きにして可愛らしい印象にしたいなら鼻中隔だけ、鼻の長さや角度は変えずに高さだけ出したいなら鼻中隔と鼻筋の両方、という使い分けの根拠になり得ます。
ただし、6人の予備研究であり、測定は腫れが引く前の時点です。この結果を「確立した事実」として受け取るのではなく、カウンセリングで「鼻先をどの方向に変えたいか」を具体的に伝えるための材料として使ってください。日本人が好む鼻の角度についての研究も参考になります。
この研究の限界
- 6人(各3人):統計的に意味のある差とされていますが、この人数では偶然の影響を否定できません。
- 測定が手術直後:麻酔や腫れの影響が残っている時点の比較で、ダウンタイム後の形は評価していません。
- 効果の持続期間は不明:溶ける糸のため、数か月〜半年以上で効果が変化する可能性があります。
- グループ分けが無作為ではない。
施術に伴う主なリスク・副作用
糸による隆鼻術:腫れ、内出血、痛み、左右差、糸の露出・移動、感染(感染した場合は糸の除去が必要になることがあります)、慢性的な炎症、皮膚の凹凸、効果が物足りない・持続期間が短いことなどがあります。
※効果や経過には個人差があります。
原著論文
Tamura T, Furuichi Y, Tamura T, Fuse T, Toma M, Okumura K, Teranishi H. Pilot Study: Thread Rhinoplasty With Different Methods of Barbed Thread Implantation. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2025;13(5):e6807. doi:10.1097/GOX.0000000000006807(PubMed)
本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

