この研究でわかったこと(3行まとめ)
- 2025年7〜8月に全国60院で経結膜脱脂を受けた920人に、「ふくらみ」「色素沈着(くま)」「皮膚のたるみ」の3つについて5段階で満足度を聞きました。
- ふくらみへの満足度は高く、3つすべてで満足した人は64〜73%でした。一方、皮膚のたるみへの満足度は年齢が上がるほど下がり、38〜48歳を境に明らかに低くなりました。
- ヒアルロン酸を併用した人は、色素沈着(65.4%→75.9%)と皮膚のたるみ(76.2%→82.9%)の満足度が高く、特に年齢が高い方では脱脂だけでなく併用を検討する根拠になります。
「目の下の脱脂をすれば、くまは消える?」「年齢が高いと脱脂だけでは足りない?」――経結膜脱脂は件数が急増している施術ですが、「受けた人がどのくらい満足したか」を複数の視点で調べた研究はありませんでした。この記事では920人に前向きに聞いた研究を紹介します。私は共著者として関わりました。
論文の基本情報
| 論文タイトル(原題) | Patient Satisfaction After Transconjunctival Orbital Fat Removal: A Multicenter Prospective Study of 920 Cases |
|---|---|
| 日本語訳 | 経結膜眼窩脂肪除去後の患者満足度:920例の多施設前向き研究 |
| 掲載誌 | Aesthetic Surgery Journal(米国美容外科学会 The Aesthetic Society の公式学術誌) |
| 掲載 | 2026年 第46巻6号 606–616ページ |
| 著者 | Takahiko Tamura, Hiroshi Okuma, Ryo Matsumoto, Takeshi Koga, Hiroki Munakata, Yuki Morimiya, Shintaro Hashimoto, Naoki Yamamoto, Keisuke Matsumura, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Hiroo Teranishi |
| 研究デザイン | 前向き観察研究(多施設) |
| 対象 | 2025年7〜8月に全国60院で経結膜脱脂を受けた920人 |
| DOI | 10.1093/asj/sjag011 |
なぜこの研究を行ったのか
目の下の「くま」は、脂肪のふくらみ、皮膚の色素沈着、皮膚のたるみという3つの要素が重なってできています。経結膜脱脂はこのうち「ふくらみ」を取る手術ですが、患者さんは「くま全体」が良くなることを期待して受けることが多く、満足度はふくらみ以外の要素にも左右されます。3つの要素を分けて満足度を調べ、何が満足度を左右するのかを明らかにすることが目的でした。
どのように調べたのか
- 対象:2025年7〜8月に全国60院で標準化された経結膜脱脂を受けた連続920人。
- 評価:ふくらみ・色素沈着・皮膚のたるみの3項目について5段階で満足度を聞き、4以上を「高い満足」としました。
- 比べた要因:年齢、脂肪の全摘か部分摘出か、併用治療(ヒアルロン酸、コラーゲン製剤、エクソソーム・ECM製剤)。
- 統計:年齢との相関、多変量ロジスティック回帰、ROC解析(満足度が下がる年齢の目安を求める方法)。
結果

- 全体:3項目すべてで高い満足だった人は64〜73%。ふくらみへの満足度は高く、年齢による差はありませんでした。
- 皮膚のたるみ:年齢が上がるほど満足度が下がりました(ρ=−0.093、p=0.005)。ROC解析では、38〜48歳を境に満足度が明らかに下がる結果でした。
- 全摘と部分摘出:全摘のほうが満足度はやや高い傾向でしたが、統計的な差はありませんでした。
- ヒアルロン酸の併用:色素沈着の満足度65.4%→75.9%(p=0.002)、皮膚のたるみ76.2%→82.9%(p=0.026)。多変量解析でも、ヒアルロン酸併用(オッズ比1.56)、ヒアルロン酸+ECM製剤併用(オッズ比1.76)は、色素沈着の満足度を上げる独立した要因でした。
患者さんにとっての意味
経結膜脱脂は「ふくらみ」には高い満足度が得られますが、「くま全体」の満足度は、年齢と併用治療で変わります。40歳前後を過ぎると、脂肪を取っただけでは皮膚のたるみが残り、「ふくらみは消えたのに、くまが消えない」という結果になりやすいことを、この研究は示しています。
そのため、40代以上で経結膜脱脂を検討している方は、「脱脂だけで何がどこまで変わるか」「色素沈着やたるみに対して何を組み合わせるか」を事前に確認してください。ヒアルロン酸の併用は、この研究では満足度を上げる方向に働いていました。ただし、併用には追加の費用とリスクがあります。
この研究の限界
- 評価時期:抄録には満足度を聞いた時期(術後何か月か)が明記されていません。短期の評価であれば、長期の満足度は別途確認が必要です。
- 1つの医療グループのデータ。
- 併用治療は無作為に割り付けていない:併用を選んだ人と選ばなかった人の背景の違いが、結果に影響している可能性があります。
- 年齢と満足度の相関は弱い(ρ=−0.093):統計的には有意ですが、年齢だけで満足度が決まるわけではありません。
- 本記事は原著論文の抄録(要旨)をもとに作成しています。
施術に伴う主なリスク・副作用
経結膜脱脂:腫れ、内出血、痛み、左右差、取りすぎによるくぼみ、取り残し、結膜の充血・浮腫、ドライアイ、一時的な複視などがあります。まれに、目の奥の出血(眼窩内出血)により視力に影響することがあります。
ヒアルロン酸注入(併用する場合):腫れ、内出血、しこり、左右差、凹凸、感染、アレルギー反応、まれに血管閉塞などがあります。目の下は、チンダル現象(青白く透ける)が起こりやすい部位です。
※効果や経過には個人差があります。
原著論文
Tamura T, Okuma H, Matsumoto R, et al. Patient Satisfaction After Transconjunctival Orbital Fat Removal: A Multicenter Prospective Study of 920 Cases. Aesthet Surg J. 2026;46(6):606-616. doi:10.1093/asj/sjag011(PubMed)
本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

