糸リフトは誰が、どう受けている?11万件のデータでわかった年齢・糸の種類・併用施術

この研究でわかったこと(3行まとめ)

  • 全国100院以上で2020〜2024年に行われた顔の糸リフト111,948件を分析しました。年間件数は981件から43,817件へと約45倍に増え、受ける人の年齢の中央値は34歳から42歳に上がりました。
  • 最も多い糸の組み合わせはPDO+PCLの併用(39.2%)、次いでPDO単独(36.7%)、PCL単独(21.1%)。溶けない糸の使用は年齢が高い人に多く、5年間で約31倍に増えました。
  • 糸リフトを受けた人の多くが、ヒアルロン酸(31.7%)やボトックス(22.5%)など、ほかの施術と組み合わせていました。

「糸リフトは何歳くらいの人が受けているの?」「糸リフトだけでたるみは治る?」――この記事では、11万件超のデータから、糸リフトが日本でどう使われているかを分析した研究を紹介します。私は共著者として関わりました。糸の素材と本数の使い分けを分析した研究と対になる内容です。

目次

論文の基本情報

論文タイトル(原題)Multicenter Review of More Than 110,000 Facial Thread Lifting Cases From a Cosmetic Surgery Group
日本語訳美容外科グループにおける11万件超の顔面糸リフト症例の多施設レビュー
掲載誌Plastic and Reconstructive Surgery – Global Open(米国形成外科学会 ASPS のオープンアクセス誌)
掲載2025年12月3日 オンライン公開/第13巻12号 e7335
著者Takahiko Tamura, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Yusuke Funakoshi, Hiroo Teranishi
研究デザイン後ろ向き観察研究(多施設)
対象2020年1月〜2024年12月の顔の糸リフト111,948件
DOI10.1097/GOX.0000000000007335

なぜこの研究を行ったのか

糸リフトの研究は、小規模で短期間のものが多く、「どんな人が、どの糸で、何と組み合わせて受けているか」を大規模に調べたものはありませんでした。実態を知ることは、患者さんが自分の選択を相対的に見る材料にも、医師が標準的な治療方針を作る土台にもなります。

どのように調べたのか

  • データ:全国100院以上で2020〜2024年に行われた顔の糸リフト111,948件。年、年齢、職業、糸の種類の組み合わせ、同時に受けた施術を集計しました。合併症の修正のための来院は含んでいません。
  • 施術:局所麻酔で、こめかみなどから鈍針(カニューレ)で皮下に糸を入れるグループ共通の方法。PDO・PCL(溶ける糸)と、溶けない糸を使い分けています。
  • 統計:年ごと・糸の種類ごとの年齢分布をクラスカル・ウォリス検定で比べました。

結果

糸リフトの年間件数。2020年981件、2021年10,624件、2022年20,714件、2023年35,812件、2024年43,817件
年間件数の推移(111,948件)。原著論文のデータをもとに作図。
  • 誰が受けているか:女性91.2%、男性8.8%。職業は会社員45.6%、主婦(主夫)9.8%、自営業9.0%、医療従事者8.6%。
  • 年齢:中央値は2020年34歳→2021年36歳→2022年39歳→2023年42歳→2024年42歳と上がっています(p<0.001)。
  • 糸の組み合わせ:PDO+PCL 39.2%、PDO単独36.7%、PCL単独21.1%、溶けない糸単独1.4%、その他の併用2%弱。
  • 溶けない糸:年齢が高い人に多く選ばれ、件数は2020年48件から2024年1,504件へ約31倍。
  • 併用した施術:ヒアルロン酸31.7%、ボトックス22.5%、経結膜脱脂8.3%、エクソソーム・ECM製剤5.7%、脂肪吸引5.0%、成長因子注入4.9%、鼻の手術4.6%。

患者さんにとっての意味

糸リフトは「単独でたるみを治す施術」から、「ほかの施術と組み合わせる土台」に変わってきています。ヒアルロン酸やボトックスとの併用が3割前後に達しているのは、糸だけでは「持ち上げ」はできても、くぼみや表情じわは別の方法で補う必要があるためです。論文でも、糸リフト単独では効果の持続が短く、併用のほうが結果が良いとする先行研究を引いています。

また、年齢の中央値が42歳まで上がり、溶けない糸が増えていることは、「より長持ちさせたい」という需要が高齢側で強まっていることを示します。ただし、年齢が高いほど合併症が増えること、年齢が高く本数が多い人ほど「物足りない」と感じやすいことは別の研究で示されており、50代以上の方は特に、糸リフトに何を期待するかを事前にすり合わせることが大切です。

この研究の限界

  • 1つの医療グループのデータ:日本全体の傾向とは限りません。グループの拡大が件数の増加に寄与しています。
  • 効果・満足度・合併症は評価していない:「どう使われているか」の研究です。
  • 施術ごとの集計:同じ人が複数回受けた場合は別々に数えられています。
  • 効果の持続期間:論文では経験的にPDOで6〜8か月、PCLで最長12か月程度としていますが、この研究で測定したものではありません。

施術に伴う主なリスク・副作用

糸リフト:腫れ、内出血、痛み、皮膚のひきつれ・凹凸、左右差、糸の露出・透け、感染、神経の損傷によるしびれや表情の左右差、アレルギー反応、効果が物足りない・持続期間が短いことなどがあります。溶けない糸では、異物感や糸の露出のリスクが相対的に高いとされています。

※効果や経過には個人差があります。

原著論文

Tamura T, Okumura K, Funakoshi Y, Teranishi H. Multicenter Review of More Than 110,000 Facial Thread Lifting Cases From a Cosmetic Surgery Group. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2025;13(12):e7335. doi:10.1097/GOX.0000000000007335(PubMed)

本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

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