糸リフトで「物足りない」と感じるのはどんな人?1,500人の分析でわかった年齢と本数

この研究でわかったこと(3行まとめ)

  • PDO糸リフトを受けた1,500人のうち、「効果が物足りない」と再来院した人は51人(3.4%)でした。
  • 再来院した人は平均47.5歳・平均13.0本で、再来院しなかった人(平均38.3歳・10.1本)より年齢が高く、糸の本数が多いという結果でした。目安は43歳以上、11本以上。
  • 「本数が多いほど満足する」とはいえず、むしろ逆でした。ただし「再来院しなかった=満足」とみなしているため、不満の割合は実際より低く出ている可能性があります。

「糸リフトをしたけれど、思ったほど変わらなかった」――合併症ではないものの、こうした「物足りなさ」は患者さんにとって大きな問題です。この記事では、どんな人が「物足りない」と感じやすいのかを1,500人のデータから調べた私たちの研究を紹介します。

目次

論文の基本情報

論文タイトル(原題)Predictors of Dissatisfaction After Polydioxanone Thread Lift: A Multicenter Retrospective Analysis
日本語訳PDO糸リフト後の不満の予測因子:多施設後ろ向き解析
掲載誌Plastic and Reconstructive Surgery – Global Open(米国形成外科学会 ASPS のオープンアクセス誌)
掲載2025年10月2日 オンライン公開/第13巻10号 e7190
著者Kohki Okumura(奥村公貴・筆頭著者), Takahiko Tamura, Yusuke Funakoshi, Hiroo Teranishi
研究デザイン多施設・後ろ向き観察研究
対象2020年11月〜2023年12月に全国105院でPDO糸リフトを受けた1,500人
DOI10.1097/GOX.0000000000007190

なぜこの研究を行ったのか

糸リフトの研究は、効果や合併症については多くありますが、「満足できなかった」という主観的な結果を調べたものはほとんどありません。しかし不満は、患者さんの信頼にも、クリニックの評判にも直結します。どんな人が不満を抱きやすいかが事前にわかれば、施術の設計や説明の仕方を変えられます。

どのように調べたのか

  • 対象:顔にPDO糸(コグ付き、17mm)のリフトを受け、年齢・性別・本数の記録がそろっている1,500人。高周波や超音波の機器を同時に使った人は除きました。
  • 「不満」の定義:施術後に「効果が物足りない」「見た目が気になる」と訴えて再来院したこと。痛みやひきつれなど身体的なトラブルだけで来院した人は除きました。再来院しなかった人は「満足」とみなしています。
  • 統計:年齢・本数・性別と不満の関係をロジスティック回帰で分析し、ROC解析で「ここから上はリスクが高い」という目安(カットオフ値)を求めました。

結果

不満で再来院した人は平均47.5歳・13.0本、しなかった人は平均38.3歳・10.1本
不満で再来院した人と、しなかった人の平均年齢と平均本数。原著論文のデータをもとに作図。
  • 不満で再来院した人:51人(3.4%)。
  • 年齢:1歳上がるごとに不満のオッズが1.06倍。目安は43歳以上(43歳以上で区切ると、不満だった人の72.5%を拾えました)。
  • 糸の本数:1本増えるごとに1.09倍。目安は11本以上(11本以上で区切ると、不満だった人の78.4%を拾えました)。
  • 性別:影響なし。
  • 年齢と本数を組み合わせた予測:AUC 0.754(1に近いほど当たりやすい指標。0.75は「まずまず使える」水準です)。

患者さんにとっての意味

糸リフトで「物足りない」と感じやすいのは、年齢が高めで、本数を多く入れた方でした。これは直感に反するかもしれません。本数を増やしたのに満足度が下がる理由として、論文では次の3つを挙げています。

  • たるみが進んでいる人ほど本数を多く入れる傾向があり、そもそも糸リフトだけでは改善が難しい状態だった。
  • 本数が多いと「それだけやったのだから」と期待が高くなり、実際の変化が期待に届かない。
  • 本数が多すぎると引っ張る力の向きが不自然になり、左右差やなじみの悪さにつながる。

43歳以上で、たるみが気になり始めている方は、「糸の本数を増やす」よりも、「糸リフトで何がどこまで変わるのか」を事前に正確に知ること、必要ならヒアルロン酸や手術など別の方法と組み合わせることのほうが、満足につながりやすいと考えられます。なお、別の研究では、年齢と本数は合併症のリスクにも関係していました。

この研究の限界

  • 「再来院しなかった=満足」とみなしている:不満があっても来院しなかった人は数えられていません。3.4%は実際より低い数字の可能性が高いです。
  • 不満の人数が51人と少ない:統計の推定が不安定になりやすい規模です。
  • たるみの程度や期待の大きさは記録にない:これらが結果に影響している可能性があります。
  • 医師ごとの技術差は考慮していない。
  • 日本人のデータ:顔の構造や文化的な期待が違う集団には、そのままあてはまらない可能性があります。

施術に伴う主なリスク・副作用

糸リフト:腫れ、内出血、痛み、皮膚のひきつれ・凹凸、左右差、糸の露出・透け、感染、神経の損傷によるしびれや表情の左右差、アレルギー反応、効果が物足りない・持続期間が短いことなどがあります。

※効果や経過には個人差があります。

原著論文

Okumura K, Tamura T, Funakoshi Y, Teranishi H. Predictors of Dissatisfaction After Polydioxanone Thread Lift: A Multicenter Retrospective Analysis. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2025;13(10):e7190. doi:10.1097/GOX.0000000000007190(PubMed)

本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文筆頭著者)/最終更新:2026年10月26日

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