埋没法に脂肪除去を足すと合併症は増える?102人の比較でわかったこと

この研究でわかったこと(3行まとめ)

  • 1人の医師が2024年に行った二重埋没法102人を、脂肪除去を同時に行った41人と行わなかった61人に分けて、平均7.5か月後までの合併症を比べました。
  • 合併症は、埋没法のみで21.3%(13人)、脂肪除去ありで4.9%(2人)。皮膚のへこみや糸の露出といった客観的な合併症は、脂肪除去ありでは0人でした。
  • ただし102人・1人の医師・平均7.5か月の小さな研究で、脂肪除去を受けた人のほうが約11歳若いという偏りがあります。376人を4.5年追跡した別の研究と合わせて読んでください。

脂肪除去を併用すると二重が長持ちしやすいことは、4.5年の追跡研究で示されました。では、脂肪を取ることで合併症は増えないのでしょうか。この記事では、合併症に絞って比べた小規模な研究を紹介します。私は共著者として関わりました。

目次

論文の基本情報

論文タイトル(原題)Impact of concurrent upper eyelid lipectomy on postoperative complications in buried suture double eyelid blepharoplasty: a retrospective analysis
日本語訳二重埋没法における上まぶた脂肪除去の併用が術後合併症に与える影響:後ろ向き解析
掲載誌Archives of Aesthetic Plastic Surgery(韓国美容外科学会の公式学術誌)
掲載2025年7月31日 オンライン公開/第31巻3号 74–79ページ
著者Shintaro Nakajo, Shintaro Hashimoto, Takahiko Tamura, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Hiroo Teranishi
研究デザイン後ろ向き解析(1施設・1医師)
対象2024年1〜12月に二重埋没法を受けた102人
DOI10.14730/aaps.2025.01396

なぜこの研究を行ったのか

二重埋没法の合併症は、まぶたの厚みと関係があるとされています。そのため、まぶたが厚い人には脂肪除去を併用することがありますが、「脂肪を取ると合併症が減るのか、それとも増えるのか」を日本で比べたデータは十分ではありませんでした。

どのように調べたのか

  • 対象:2024年に1人の医師が行った二重埋没法(連続法)102人。高血圧・糖尿病・抗凝固薬の使用など、傷の治りに影響する持病がある人は除外。
  • 脂肪除去の方法:目頭から約20mmの位置に2mm以下の穴を開け、眼輪筋の一部、隔膜前脂肪、眼窩脂肪を取りました。
  • 脂肪除去の適応:ブジーで作った二重が1回のまばたきで消える、横から見て上まぶたがまつ毛の付け根より前に出ている、本人の希望、のいずれか。
  • 合併症の定義:客観的なもの(皮膚のへこみ、盛り上がり、糸の露出、結膜の炎症、二重の消失)と、主観的なもの(異物感、左右差・幅の修正希望)に分けて集計。
  • 追跡:1〜13か月、平均7.5か月。

結果

埋没法のみ21.3%、埋没法+脂肪除去4.9%の合併症発生率を比べた棒グラフ
合併症の発生率(平均7.5か月)。原著論文のデータをもとに作図。
  • 合併症全体:埋没法のみ13/61人(21.3%)、脂肪除去あり2/41人(4.9%)(p=0.035)。
  • 客観的な合併症:埋没法のみ7人(皮膚のへこみ・盛り上がり・糸の露出6人、結膜の炎症1人)、脂肪除去あり0人。
  • 主観的な合併症:埋没法のみ6人、脂肪除去あり2人。統計的な差はありませんでした。
  • 糸のゆるみによる二重の消失:どちらのグループにも0人(観察期間が短いため)。
  • 年齢の影響を除いた解析:脂肪除去をした人の合併症のオッズは0.16倍(95%信頼区間0.03–0.81)。

患者さんにとっての意味

この研究が示しているのは、まぶたが厚い人で脂肪除去を併用しても、少なくとも半年程度の範囲では合併症は増えておらず、むしろ少なかったということです。脂肪が減ることで糸にかかる力が分散し、皮膚のへこみや糸の露出が起きにくくなると考えられます。

ただし、人数が少なく、脂肪除去を受けた人は平均25歳、受けなかった人は平均37歳と、年齢がかなり違います。年齢の影響を統計で補正してはいますが、「脂肪除去が合併症を減らす」と言い切るには、この研究だけでは足りません。

この研究の限界

  • 102人・1施設・1人の医師:結果が他の医師や施設にあてはまるかはわかりません。
  • 年齢の偏り:脂肪除去を受けた人のほうが約11歳若く、まぶたの厚みも医師の判断で選ばれているため、偏りが結果に影響している可能性があります。
  • 観察期間が平均7.5か月:糸のゆるみによる戻りは、通常もっと後に起きます。長期の合併症は評価できていません。
  • 合併症が15件と少ない:統計の推定が不安定になりやすい規模です。
  • 論文内の数値に食い違いがある:性別の人数が本文と表で一致しない箇所があります。この記事では本文の数値を使っています。

施術に伴う主なリスク・副作用

二重埋没法:腫れ、内出血、痛み、左右差、二重のラインが薄くなる・消える(戻り)、糸の露出、感染、目のゴロゴロ感などがあります。

上まぶたの脂肪除去:上記に加えて、取りすぎによる上まぶたのくぼみ、左右差、腫れが長引くことなどがあります。

※効果や経過には個人差があります。

原著論文

Nakajo S, Hashimoto S, Tamura T, Okumura K, Teranishi H. Impact of concurrent upper eyelid lipectomy on postoperative complications in buried suture double eyelid blepharoplasty: a retrospective analysis. Arch Aesthetic Plast Surg. 2025;31(3):74-79. doi:10.14730/aaps.2025.01396

本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

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