ヒアルロン酸は何歳の人が、どこに入れている?30万回の注入データでわかった変化

この研究でわかったこと(3行まとめ)

  • 全国110院で2020年10月〜2024年12月に行われた顔のヒアルロン酸注入299,413回(417,590部位)を分析しました。
  • 2020〜2022年は20代が最も多かったのに対し、2023年以降は40歳以上が半数を超え、2024年には63.7%になりました。
  • 若い人は涙袋やあごの「輪郭づくり」、40代以上は目の下のくぼみ(オービタルリム)やほうれい線の「若返り」が中心で、年齢が上がるほど複数部位を同時に治療する傾向がありました。

「ヒアルロン酸は何歳くらいの人が、どこに入れているの?」――ヒアルロン酸注入は世界で最も多く行われている美容医療の一つですが、日本で「どの部位に」「どの年代が」受けているかを大規模に調べたデータはありませんでした。この記事では約30万回の注入データを分析した研究を紹介します。私は共著者として関わりました。

目次

論文の基本情報

論文タイトル(原題)From Contouring to Rejuvenation: A Nationwide Big-Data Analysis of Hyaluronic Acid Injection Trends in Japan
日本語訳輪郭形成から若返りへ:日本におけるヒアルロン酸注入動向の全国ビッグデータ解析
掲載誌Journal of Clinical Medicine(MDPI のオープンアクセス誌)
掲載2026年1月22日 オンライン公開/第15巻2号 893
著者Takahiko Tamura, Taichi Tamura, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Hiroo Teranishi
研究デザイン後ろ向きコホート研究(多施設)
対象2020年10月〜2024年12月の顔のヒアルロン酸注入299,413回・417,590部位
DOI10.3390/jcm15020893

なぜこの研究を行ったのか

米国や国際学会の統計では、ヒアルロン酸注入の件数や年代の分布はわかりますが、「どの部位に」「1回に何か所」といった細かい情報はありません。また、東アジア人の顔は欧米人と骨格や皮膚の厚みが違うため、加齢の出方も治療の目的も異なります。日本人の実態を部位別に示すことが目的でした。

どのように調べたのか

  • データ:全国110院の電子カルテ。注入部位は14の区分(額、こめかみ、上まぶた、目の下のくぼみ、涙袋、ゴルゴライン、鼻、頬、ほうれい線、唇、マリオネットライン、あご など)で統一して記録。
  • 数え方:「患者数」は来院回数です。同じ人が複数回受けた場合は別々に数えています。
  • 統計:年齢層(20歳未満〜60歳以上の6区分)ごとに、複数部位の治療を受ける確率と、各部位を選ぶ確率をロジスティック回帰で比べました。
  • 補足:2021年に製剤と部位の分類を統一したため、部位別の分析は2021年以降のデータを使っています。

結果

年代の変化2020〜2022年は20代が最多。2023年以降は40歳以上が半数超。40歳以上の割合は2021年39.4%→2024年63.7%。
1回あたりの部位数平均1.32部位(2021年)→1.50部位(2024年)。年齢が上がるほど複数部位を同時に治療する確率が高い(p<0.001)。
多い部位(2024年)目の下のくぼみ(オービタルリム)22.6%、ほうれい線20.6%。
20歳未満涙袋が46.7%で最多。次いであご。
50代目の下のくぼみ30.1%、ほうれい線26.8%。涙袋はほぼゼロ。
40代以降で急増マリオネットライン(口角から下に伸びる線)の治療。
1院あたりの件数2021年392件→2024年1,069件(院数の増加だけでは説明できない増え方)。

患者さんにとっての意味

日本のヒアルロン酸注入は、「若い人の輪郭づくり」から「40代以上の若返り」へ主役が移っています。そして若返りの治療は、1か所にヒアルロン酸を入れるだけでは済まないことが多く、目の下のくぼみ・中顔面・口元を組み合わせて立体的に補う方向に進んでいます。これは、加齢で骨が痩せ、深部の脂肪がしぼみ、靭帯がゆるむという顔の老化の仕組みに沿った考え方です。

40代以上でヒアルロン酸を検討している方は、「ほうれい線だけ」「目の下だけ」と部位を決め打ちするより、「顔全体で何が起きているか」を診てもらい、優先順位をつけるほうが結果につながりやすいと考えられます。なお、同じデータベースから重い合併症の頻度も報告されています(約2万4千部位に1件)。

この研究の限界

  • 1つの医療グループのデータ:グループの価格設定や広告が患者層に影響している可能性があります。
  • 来院回数で数えている:同じ人の繰り返しと新規の人を区別できません。
  • 製剤が1メーカーに統一されている:製剤の特性が部位の選択に間接的に影響した可能性は否定できません。
  • 満足度や効果は評価していない。
  • 年ごとの複数部位治療の正確な割合は出せていない:平均部位数からの概算です。

施術に伴う主なリスク・副作用

ヒアルロン酸注入:腫れ、内出血、痛み、しこり、左右差、凹凸、注入部位のかゆみや赤み、感染、アレルギー反応などがあります。まれに、血管内に入ることで皮膚の壊死や、額・鼻・眉間への注入では失明につながる血管閉塞が起こることがあります。

※効果や経過には個人差があります。

原著論文

Tamura T, Tamura T, Okumura K, Teranishi H. From Contouring to Rejuvenation: A Nationwide Big-Data Analysis of Hyaluronic Acid Injection Trends in Japan. J Clin Med. 2026;15(2):893. doi:10.3390/jcm15020893(PubMed)

本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

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