この研究でわかったこと(3行まとめ)
- 溶ける糸の糸リフトを受けた24人を、糸リフトだけの12人と、あご下〜口元(ジョール)の脂肪吸引を同時に受けた12人に、性別・年齢・糸の本数をそろえて分け、3D画像で顔の体積変化を比べました。
- 2週間後、口元〜あご下の体積は、糸リフトだけで平均−0.54mL、脂肪吸引を併用すると平均−1.42mL。「頬」と「口元〜あご下」の体積変化の差(メリハリの指標)は、併用で約2.3倍大きくなりました。
- 頬の持ち上がりそのものは2週間時点では差がなく、1か月時点でわずかに差が出た程度です。併用の効果は「頬が上がる」より「口元〜あご下が引き締まる」ことで生まれていました。
「糸リフトだけでフェイスラインは変わる?」「脂肪吸引も一緒にやったほうがいい?」――糸リフトと脂肪吸引の組み合わせは実際によく行われていますが、「どこがどのくらい変わるか」を数字で示した研究はほとんどありませんでした。この記事では、3D画像で体積の変化を測った小規模な研究を紹介します。私は共著者として関わりました。
論文の基本情報
| 論文タイトル(原題) | Adjunct jowl-fat liposuction increases the inter-zonal volumetric difference after absorbable thread lift: a matched-pair VECTRA 3D analysis |
|---|---|
| 日本語訳 | ジョール脂肪吸引の併用は、溶ける糸の糸リフト後の領域間体積差を増やす:マッチドペアによるVECTRA 3D解析 |
| 掲載誌 | European Journal of Plastic Surgery(Springer) |
| 掲載 | 2026年7月31日 オンライン公開/第49巻 論文番号145 |
| 著者 | Keisuke Matsumura, Takahiko Tamura, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Hiroo Teranishi |
| 研究デザイン | 後ろ向きマッチドペア研究(1施設)、エビデンスレベルⅢ |
| 対象 | 2023年12月〜2025年12月に溶ける糸の糸リフトを受け、術前・2週間後・1か月後の3D画像がそろっている人から、条件をそろえた各12人 |
| DOI | 10.1007/s00238-026-02530-7 |
なぜこの研究を行ったのか
糸リフトと脂肪吸引の併用については、これまで満足度や写真の印象といった主観的な評価が中心で、「顔のどの部分の体積が、どれだけ変わったか」を客観的に測った研究は限られていました。3D画像解析(VECTRA)を使えば、mL単位で体積の変化を比べられます。
どのように調べたのか
- 対象:糸リフトのみ12人と、糸リフト+あご下〜口元(ジョール)の脂肪吸引12人。性別・年齢・糸の合計本数が同じになるよう1対1でペアを組みました。
- 測定:術前、2週間後、1か月後にVECTRA 3Dで撮影。顔を「ゾーン1:口元〜あご下」と「ゾーン2:頬の中央」に分けて、それぞれの体積変化を測りました。
- 主な評価項目:2週間後の「ゾーン2の体積変化とゾーン1の体積変化の差(S)」。頬が上がり、口元〜あご下が減るほど、この差は大きくなります。顔の「メリハリ」の指標と考えてください。
- 統計:ペアごとの差の平均と95%信頼区間、幾何平均比。ウィルコクソン符号付き順位検定で感度分析。
結果

- メリハリの指標 S(2週間後):併用1.66±0.46mL、糸リフトのみ0.76±0.37mL。ペアの差の平均0.91mL(95%信頼区間0.46〜1.36、p<0.001)。幾何平均比2.33倍(95%信頼区間1.57〜3.46)。
- 口元〜あご下(ゾーン1、2週間後):併用−1.42±0.48mL、糸リフトのみ−0.54±0.32mL(p<0.001)。
- 頬の中央(ゾーン2、2週間後):併用+0.25±0.14mL、糸リフトのみ+0.21±0.09mL(p=0.506、差なし)。
- 頬の中央(1か月後):併用+0.18mL、糸リフトのみ+0.11mL(p=0.041)。2週間後の値に対する残存率は72.9%対50.3%(探索的解析)。
患者さんにとっての意味
糸リフトに脂肪吸引を足したときに変わるのは、主に「口元〜あご下が減る」ことで、「頬が上がる」量はほとんど変わらない――これが、この研究の最も実用的な情報です。フェイスラインのもたつき(ジョール)が主な悩みなら、糸だけで引き上げるより、脂肪吸引を併用するほうが変化は大きくなります。逆に、頬の位置を上げたいのが主な目的なら、脂肪吸引を足しても頬の持ち上がりが増えるわけではありません。
なお、体積の変化は1mL前後です。小さく感じるかもしれませんが、顔の輪郭では数mLの違いが見た目に影響します。ただし、「見た目がどう変わったか」「満足したか」はこの研究では測っていません。
この研究の限界
- 各12人・1施設:人数が少なく、結果の再現性は確認が必要です。
- 吸引した脂肪の量が記録されていない:どのくらい吸引すると、どのくらい変わるかはわかりません。
- 観察が1か月まで:糸の効果が薄れる数か月以降の変化は不明です。腫れの影響が残っている時期の測定でもあります。
- 後ろ向き研究:脂肪吸引を併用するかどうかは患者さんと医師の判断で決まっており、無作為ではありません。
- 本記事は原著論文の抄録(要旨)をもとに作成しています。
施術に伴う主なリスク・副作用
糸リフト:腫れ、内出血、痛み、皮膚のひきつれ・凹凸、左右差、糸の露出・透け、感染、神経の損傷によるしびれや表情の左右差、効果が物足りない・持続期間が短いことなどがあります。
あご下〜口元の脂肪吸引:腫れ、内出血、痛み、むくみ、つっぱり感、感覚の鈍さ、皮膚の凹凸や左右差、たるみが目立つこと、血腫、感染などがあります。
※効果や経過には個人差があります。
原著論文
Matsumura K, Tamura T, Okumura K, Teranishi H. Adjunct jowl-fat liposuction increases the inter-zonal volumetric difference after absorbable thread lift: a matched-pair VECTRA 3D analysis. Eur J Plast Surg. 2026;49:145. doi:10.1007/s00238-026-02530-7
本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

