この研究でわかったこと(3行まとめ)
- 健康な9人の顔の左半分にPRP(自分の血液から作る多血小板血漿)、右半分に生理食塩水を同じ条件で注入し、1か月後の肌を画像解析装置で客観的に比べました。
- 肌の「ツヤ(光沢)の面積」は、PRP側で+20.8%、生理食塩水側で+3.6%と、PRP側のほうが明らかに増えました(p=0.0039)。
- 毛穴はPRP側で減る傾向がありましたが、複数の項目を同時に検定する補正をかけると統計的に有意ではなくなりました。しわ・シミ・メラニンには1か月では差がありませんでした。
「PRPで肌は本当に変わるの?」――PRP(多血小板血漿)は美容医療で広く使われていますが、効果の根拠の多くは「見た目の印象」や「本人の満足度」でした。この記事では、同じ人の顔の左右で比べ、機械で数値化した研究を紹介します。私は共著者として関わりました。
論文の基本情報
| 論文タイトル(原題) | Objective evaluation of platelet-rich plasma mesotherapy on facial skin quality: An interim split-face analysis using an advanced imaging system |
|---|---|
| 日本語訳 | PRPメソセラピーが顔の肌質に与える効果の客観的評価:高度画像解析システムを用いた左右比較の中間解析 |
| 掲載誌 | Regenerative Therapy(日本再生医療学会の公式学術誌、オープンアクセス) |
| 掲載 | 2025年10月23日 オンライン公開/第30巻 969–976ページ |
| 著者 | Masashi Umeda, Takahiko Tamura, Kohki Okumura(奥村公貴・共著者), Reiko Kiuchi, Hiroo Teranishi |
| 研究デザイン | 非ランダム化・オープンラベルの左右比較試験(登録済み臨床試験 UMIN000058413 の中間解析) |
| 対象 | 健康な日本人の成人9人(女性6人・男性3人、27〜43歳) |
| DOI | 10.1016/j.reth.2025.10.008 |
なぜこの研究を行ったのか
PRPには血小板由来の成長因子が多く含まれ、コラーゲンの産生や組織の修復を促すとされます。ただ、肌質への効果を客観的に測った研究は少なく、「効いた気がする」の域を出ないものが多いのが実情でした。そこで、同じ人の顔の左右で比べ(個人差の影響を除く)、肌の状態を自動で数値化する画像解析装置で評価することにしました。
どのように調べたのか
- 対象:クリニックの職員9人。皮膚疾患、妊娠・授乳中、抗凝固薬の使用がある人は除外。
- 方法:本人の血液30mLからPRP約5mLを作り、顔の左側に注入。右側には生理食塩水5mLを同じ条件で注入。注入は機械式の多針注入器で、深さ0.8〜1.2mm、片側100か所(頬・目の下・目尻)。
- 評価:画像解析装置(NeoVoir)で、注入前・2週間後・1か月後に、毛穴、しわ、ツヤ、メラニン、色素沈着などを自動測定。主要評価項目は「1か月後のツヤの面積の変化率」と事前に決めました。
- 統計:左右の差をウィルコクソン符号付き順位検定で比較。主要項目以外は、複数の項目を同時に検定する補正(FDR補正)をかけました。
結果

- ツヤの面積(主要評価項目):1か月後、PRP側+20.8%、生理食塩水側+3.6%。差は16.3ポイント(95%信頼区間12.1〜24.5、p=0.0039)。
- 毛穴スコア:1か月後、PRP側−9.4%、生理食塩水側+3.9%。補正前はp=0.0039でしたが、FDR補正後はq=0.066で、統計的に有意とはいえませんでした。
- しわ・メラニン・色素沈着:1か月では左右に差なし。
- 安全性:赤みや腫れなどの軽い一時的な反応のみで、重い副作用はありませんでした。
患者さんにとっての意味
この研究からいえるのは、PRPの注入で、1か月後の肌の「ツヤ」が客観的に測れるレベルで増えるということです。ツヤの面積は、角質層のなめらかさや光の反射の均一さを反映する指標で、「肌が明るく見える」「透明感がある」という印象と相関することが知られています。
一方で、しわやシミへの効果は、この研究では示されていません。1か月という短い期間では、真皮の構造的な変化やメラニンの変化を捉えるには足りないためです。「PRPでしわが消える」「シミが薄くなる」といった説明を受けた場合、この研究はその根拠にはなりません。
この研究の限界
- 9人・1か月:人数が少なく、長期の効果はわかりません。
- クリニックの職員が対象:肌の状態が比較的良い健康な人で、加齢による肌の変化が進んだ人にあてはまるかは不明です。
- オープンラベル:どちらの側にPRPを入れたかを、本人も解析者も知っています。測定は機械が自動で行うため影響は限定的とされますが、完全には否定できません。
- 左が必ずPRP:寝る向きや紫外線の当たり方など、左右の生活習慣の差が影響する可能性があります。
- 血小板濃度を測っていない:実際に何倍に濃縮されたかは確認されていません。
- 中間解析:登録された主要評価項目(3か月・6か月の写真評価と満足度)は、まだ報告されていません。
施術に伴う主なリスク・副作用
PRP注入:注入部位の赤み、腫れ、内出血、痛み、かゆみ、一時的な凹凸、感染などがあります。自分の血液を使うためアレルギーのリスクは低いとされますが、注入手技に伴うリスクはほかの注入治療と同様にあります。
※効果や経過には個人差があります。
原著論文
Umeda M, Tamura T, Okumura K, Kiuchi R, Teranishi H. Objective evaluation of platelet-rich plasma mesotherapy on facial skin quality: An interim split-face analysis using an advanced imaging system. Regen Ther. 2025;30:969-976. doi:10.1016/j.reth.2025.10.008(PubMed)
本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文共著者)/最終更新:2026年10月26日

