この研究でわかったこと(3行まとめ)
- 二重埋没法(2点留め)と同時に上まぶたの脂肪を取った188人と、取らなかった188人を、最長4.5年間追跡して再手術率を比べました。
- 再手術率は、脂肪を取った人で17.0%、取らなかった人で33.5%。年齢・性別の影響を除いても、脂肪除去で再手術のリスクは約半分(ハザード比0.45)でした。
- ただし脂肪を取るかどうかは医師の判断で決まっており、くじ引きではありません。全員に脂肪除去をすすめる研究ではなく、まぶたが厚い人など、向いている人を選ぶための根拠です。
「まぶたが厚いので、埋没法だけだと取れやすいと言われた」「脂肪を取ると長持ちするというのは本当?」――これは医師の間でも「経験上そう思う」と言われてきたものの、数字で確かめた研究はほとんどありませんでした。この記事では、脂肪除去の有無で4.5年後の再手術率を比べた私たちの研究を紹介します。
論文の基本情報
| 論文タイトル(原題) | Effect of Upper Eyelid Fat Removal on Reoperation Rate and Long-Term Stability in Buried Suture Double Eyelid Surgery: A 4.5-Year Retrospective Cohort Study |
|---|---|
| 日本語訳 | 二重埋没法における上まぶた脂肪除去が再手術率と長期安定性に与える影響:4.5年間の後ろ向きコホート研究 |
| 掲載誌 | Aesthetic Plastic Surgery(国際美容外科学会 ISAPS の公式学術誌) |
| 掲載 | 2025年12月 オンライン公開/2026年 第50巻3号 871–877ページ |
| 著者 | Kohki Okumura(奥村公貴・筆頭著者), Takahiko Tamura, Yusuke Funakoshi, Hiroo Teranishi |
| 研究デザイン | 多施設・後ろ向きコホート研究(傾向スコアによる感度分析つき) |
| 対象 | 2020年10〜12月に全国105院で2点留めを受けた2,934人のうち、脂肪除去あり188人と、なし188人 |
| DOI | 10.1007/s00266-025-05492-6 |
なぜこの研究を行ったのか
二重埋没法は、糸でまぶたの組織どうしをくっつけて(癒着させて)二重のラインを作ります。上まぶたの脂肪――特に眼輪筋の下にあるROOF(ルーフ)と、その奥にある眼窩脂肪――が多いと、組織どうしがくっつくのを邪魔して、ラインが安定しにくいと考えられてきました。
そのため、まぶたが厚い人には埋没法と同時に脂肪を少し取ることがあります。ただ、本当に長持ちするのかを、長期間・多人数で確かめた研究はありませんでした。
どのように調べたのか
- 対象:2020年10〜12月に全国105院で2点留め(7-0ナイロン)の埋没法を受けた2,934人。このうち上まぶたの脂肪除去を同時に受けた188人全員と、受けなかった人の中から時期と院をそろえて無作為に選んだ188人を比べました。
- 脂肪除去の方法:埋没法の糸を通す点に約2mmの小さな穴を開け、そこからROOFと、はみ出している眼窩脂肪を控えめに取ります。取りすぎると上まぶたがくぼむため、必要な分だけ取ります。
- 追跡:2025年6月まで、最長4.5年。主な評価項目は、二重のラインが消えたことによる再手術。
- 統計:年齢・性別の影響を取り除くロジスティック回帰とコックス回帰に加え、「脂肪除去を受けやすい人」の偏りを補正する傾向スコアマッチング(164組)と逆確率重み付けで、結果が変わらないかを確認しました。
結果
平均年齢は約25歳、男性は約7%で、2つのグループに差はありませんでした。

- 再手術率:脂肪除去あり17.0%(32人)、なし33.5%(63人)。
- 年齢・性別の影響を除いた解析:脂肪除去をした人の再手術のオッズは0.39倍(約60%減)。時間経過を考慮したコックス回帰でもハザード比0.449(約55%減)。
- 偏りを補正した解析でも同じ方向:傾向スコアでそろえた164組の比較では、再手術率17.1%対34.1%(オッズ比0.49)。
- 再手術までの期間:中央値で627日(あり)と490日(なし)。統計的な差はありませんでした。
患者さんにとっての意味
この研究からいえるのは、まぶたの脂肪が多い人では、埋没法と同時に脂肪を控えめに取ることで、数年後にラインが残っている割合が上がる可能性が高いということです。脂肪が減ることで組織どうしがくっつきやすくなり、術後のむくみも引きやすくなると考えられます。
一方で、次の点は注意が必要です。
- 全員にすすめるものではありません。脂肪が少ない人が取ると、上まぶたがくぼんだり、年齢とともにくぼみが目立ったりすることがあります。この研究でも、脂肪除去は医師が「向いている」と判断した人にだけ行われています。
- 追加の費用がかかります。
- 脂肪を取っても17%は再手術になっています。「取れば絶対に持つ」わけではありません。
この研究の限界
- くじ引きで分けていない:脂肪を取るかどうかは医師の判断です。まぶたが厚い人ほど脂肪除去を受けやすいはずで、その影響を統計で補正していますが、完全には取り除けません。
- 再手術の判断には患者さんの希望も含まれる:「ラインが消えた」だけでなく、仕上がりへの不満で再手術した人も含まれている可能性があります。
- 医師ごとの技術差は考慮していない。
- 費用の影響:脂肪除去は有料のため、経済的な理由で受けなかった人がいる可能性があり、これも偏りの原因になり得ます。
施術に伴う主なリスク・副作用
二重埋没法:腫れ、内出血、痛み、左右差、二重のラインが薄くなる・消える(戻り)、糸の露出、感染、目のゴロゴロ感などがあります。
上まぶたの脂肪除去:上記に加えて、取りすぎによる上まぶたのくぼみ、左右差、腫れが長引くことなどがあります。くぼみは年齢とともに目立ちやすくなることがあります。
※効果や経過には個人差があります。
原著論文
Okumura K, Tamura T, Funakoshi Y, Teranishi H. Effect of Upper Eyelid Fat Removal on Reoperation Rate and Long-Term Stability in Buried Suture Double Eyelid Surgery: A 4.5-Year Retrospective Cohort Study. Aesthetic Plast Surg. 2026;50(3):871-877. doi:10.1007/s00266-025-05492-6(PubMed)
本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文筆頭著者)/最終更新:2026年10月26日

