この研究でわかったこと(3行まとめ)
- 二重埋没法(2点留め)を受けた600人を6つの年齢層(各100人)に分け、最長4.5年間、糸のゆるみによる再手術がどのくらい起きたかを調べました。
- 再手術率は20歳未満で41%と最も高く、30代で12%と最も低い「U字型」でした。60歳以上も23%と高めでした。
- 若い人は再手術のリスクが20代の約1.9倍。年齢によって、術式の選び方や追加の処置を変える必要があるといえます。
「10代のうちに二重にしても大丈夫?」「年齢が高いと埋没法は取れやすい?」――年齢に関するご相談は多いのですが、年齢と「戻り」の関係をきちんと数字で調べた研究はほとんどありませんでした。この記事では、全国52,281件のデータから年齢層ごとに100人ずつを選んで比べた私たちの研究を紹介します。
論文の基本情報
| 論文タイトル(原題) | Age-Related Variations in Reoperation Risk from Suture Loosening in Two-Point Buried Suture Double Eyelid Surgery: A Stratified Retrospective Cohort Analysis |
|---|---|
| 日本語訳 | 2点留め二重埋没法における糸のゆるみによる再手術リスクの年齢差:層別後ろ向きコホート解析 |
| 掲載誌 | Aesthetic Plastic Surgery(国際美容外科学会 ISAPS の公式学術誌) |
| 掲載 | 2025年10月 オンライン公開/2025年 第49巻23号 6431–6438ページ |
| 著者 | Kohki Okumura(奥村公貴・筆頭著者), Takahiko Tamura, Yusuke Funakoshi, Hiroo Teranishi |
| 研究デザイン | 年齢層別の後ろ向きコホート研究(多施設) |
| 対象 | 2020〜2021年に全国105院で2点留めを受けた52,281人から、年齢層ごとに100人ずつ無作為に選んだ600人 |
| DOI | 10.1007/s00266-025-05404-8 |
なぜこの研究を行ったのか
二重埋没法で最も多いトラブルは、糸がゆるんでラインが薄くなる・消える「戻り」です。再手術率は報告によって数%から20%以上までばらつきがあり、年齢の影響はよくわかっていませんでした。
理屈の上では、若い人は皮膚の弾力が強くまぶたの脂肪も多いため糸が安定しにくく、年齢が高い人は皮膚が薄くなりコラーゲンが減るため糸を支える土台が弱い、という両方の可能性があります。これを実際のデータで確かめることが目的でした。
どのように調べたのか
- 対象:2020年1月〜2021年12月に全国105院で、2点留め(7-0ナイロン)の二重埋没法を受けた52,281人。
- 抽出:20歳未満、20代、30代、40代、50代、60歳以上の6つの年齢層から、100人ずつ無作為に選びました(計600人)。
- 追跡:2025年6月まで、最長4.5年。
- 主な評価項目:糸のゆるみ(ラインが薄くなる・消える)による再手術。幅の変更や左右差の修正、感染など、ゆるみ以外の理由の再手術は別に集計しました。
- 統計:カイ二乗検定、カプラン・マイヤー法、コックス比例ハザードモデル(性別の影響を取り除いて年齢の影響を見る方法)。外部の統計専門家が解析を検証しました。
結果
600人のうち、糸のゆるみによる再手術は134人(22.3%)でした。年齢層別の再手術率は次のとおりです。

- 20歳未満:41% 20代:23% 30代:12% 40代:18% 50代:17% 60歳以上:23%
- 年齢層による差は統計的に明らかでした(p<0.001)。「年齢が上がるほど一直線に増える/減る」のではなく、両端が高いU字型です。
- 性別の影響を取り除いた解析では、20歳未満は20代に比べて再手術のリスクが1.91倍(95%信頼区間1.13–3.23、p=0.015)。60歳以上は1.34倍でしたが、統計的に差があるとはいえませんでした(p=0.327)。
- 性別は再手術のリスクに影響していませんでした。
患者さんにとっての意味
10代の方へ:2点留めの埋没法では、10人に4人が数年以内に糸のゆるみで再手術になっています。「若いから大丈夫」ではなく、むしろ最も戻りやすい年代です。顔の骨格や軟部組織が成長途中であること、皮膚の弾力が強いこと、まぶたの脂肪が多いことが理由と考えられます。急がないのであれば18歳以降まで待つ、受けるなら連続法など固定の強い術式を検討する、戻る可能性を前提に計画する――このあたりを診察で相談してください。
60歳以上の方へ:皮膚が薄くなり、糸を支える土台が弱くなっているため、糸だけに頼る方法では安定しにくくなります。たるんだ皮膚の切除や脂肪の処理を組み合わせる方法のほうが向いている場合があります。
30〜50代の方へ:この年代は最も安定していました。ただし「12〜18%」は決してゼロではありません。
この研究の限界
- まぶたの厚み・脂肪の量・筋肉の厚さは測っていない:これらが年齢と一緒に影響している可能性があり、年齢だけの影響として切り分けることはできていません。
- 2点留めのみ:連続法や3点留め、切開法との比較はしていません。他の術式に同じ数字をあてはめることはできません。
- 過去の記録をさかのぼった研究:原因と結果の関係を証明するには、前向きの研究が必要です。
- 60歳以上の結果は統計的に確定していない:再手術率は高めでしたが、人数が限られるため、偶然の範囲を超えるとはいい切れませんでした。
施術に伴う主なリスク・副作用
二重埋没法:腫れ、内出血、痛み、左右差、二重のラインが薄くなる・消える(戻り)、糸の露出、感染、目のゴロゴロ感、希望と違う幅になることなどがあります。戻りが起きた場合は再手術が必要になることがあります。
※効果や経過には個人差があります。
原著論文
Okumura K, Tamura T, Funakoshi Y, Teranishi H. Age-Related Variations in Reoperation Risk from Suture Loosening in Two-Point Buried Suture Double Eyelid Surgery: A Stratified Retrospective Cohort Analysis. Aesthetic Plast Surg. 2025;49(23):6431-6438. doi:10.1007/s00266-025-05404-8(PubMed)
本記事は、学術論文の内容を一般の方向けに解説したものであり、特定の施術を推奨するものではありません。施術の適否は医師の診察のうえで判断してください。
執筆:奥村公貴(美容外科医・本論文筆頭著者)/最終更新:2026年10月26日

